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         商法改正・現代化改正

2006年に会社法が大きく変わります。

2005年の通常国会で審議されている 「会社法案」は、6月29日可決されました。

施行は 2006年からですが、外資系企業による日本企業の買収を容易にする、「三角合併」の解禁に関する規定だけは、施行が1年先延ばしにされます。経済界の心配を受け、日本企業が「ポイズンピル」などの買収防衛策を優先的に講じられるように配慮しています。

新会社法では、

有限会社と株式会社の一体化、

機関設計の柔軟化、

日本版 LLC「合同会社」の新設など自由な経営、

会計参与制度の導入など定款自治の拡大、

対価の柔軟化などを特徴としています。主なものをまとめてみます。

(以下、今回改正された法律を、新会社法と略して使用します。)

株式会社と有限会社の一体化

 現代化改正では、有限会社が株式会社に一体化されます。

考え方として、株式譲渡制限のある会社と譲渡制限のない会社での区分です。

株式の譲渡制限があるとは、閉鎖的な、有限会社的な性格、またオーナー会社的な性格を帯びています。

これに対して譲渡制限がないとは、現在の多くの株式上場大企業に見られる形態

です。

またこれに付随して、譲渡制限会社の機関設計の規制が緩和されます。

取締役会を置く会社と、置かない会社の存在が認められます。

現実問題として譲渡制限がある会社では、企業の経営者と、出資者としての株主

が実態は切り離されていない。つまり「支配権の移動に経営者が関与できる」。

法律に定めのある事項や、定款変更などの、株主総会決議事項と、取締役会や

代表取締役の決定する重要事項とを、規定文上は区別しても、実態は株主総会と

経営者が分離していないケースが多いため、

機関設計にも自由度を与え、取締役会を置かないで、株主総会で全て決定する形態

が認められることになります。

なお取締役会をおかない選択をした、譲渡制限会社では、監査役をおくかどうかも、

選択できることになります。

株式会社の取締役の任期は、現行は最長 2年です。一方有限会社では取締役の任

期の規定がありません。そこで今回の改正では、株式会社と有限会社を一体化し、

譲渡制限会社では、定款の規定で最長 10年まで任期を伸長できることになります。

カタカナの文語体が、ひらがなの平易な表現に

 現代化改正として、カタカナの文語体が、ひらがなの平易な表現に修正されます。

最低資本金制度の撤廃
 資本金 1円からの起業が可能です。

2003年に施行された「新事業創出促進法」では、経済産業省の確認を受けた、確認会社に対してのみ、資本金の特例措置を設けていましたが、今回の現代化改正では「最低資本金」規制は完全撤廃されました。

但し、配当などの財産払い戻しを行うためには、会社に純資産が 300万円以上ある

ことが要求されます。これについては、現行の有限会社の 300万円に揃えられました。

会計監査人の任意設置と会計参与の創設

 現行法では、法律上の大会社については、公認会計士または監査法人を資格要件と

する会計監査人を設置しなければならない。また資本金の額が 1億円を超える中会社は、定款の定めにより会計監査人を設置することが可能ですが、小会社にはこれが認められていませんでした。

更に有限会社になると、大会社規模であっても、会計監査人の設置が義務ではありませんでした。

新会社法においては、大会社には会計監査人設置の義務を継続するとともに、それ以外会社に関しては定款でこれを設置することができるようにしました。

なお、会計監査人の設置には、前提条件として、当該会社が、

@委員会設置会社であるか
A監査役 (監査役会を含む)を設置していなければならないとされています。

新会社法では、「会計参与」と言う機関が新たに設置可能となりました。会計参与とは、公認会計士もしくは監査法人、または税理士、もしくは税理士法人であることを必要とし、取締役または執行役と共同で「計算書」を作る機関です。

この会計参与の設置は、会社の任意とし、株主総会で選ばれることになります。

こうした専門家の関与によって、計算書類等の正確性が高まりますので、小企業などの信用獲得と、資金調達面でメリットがあるのではと予測されます。

合同会社「日本版 LLC(Limited Liability Company)」の新設と

有限責任事業体「日本版 LLP(Limited Liability Partnership)について

 新会社法では新たに合同会社が設置されました。米国の有限責任会社 LLCを参考にしています。

有限責任の社員(出資者)だけで作れ、貢献に応じた配当比率を決められるなど

自由な経営形態として注目されます。

LLCは、

@有限責任の社員だけで構成されます。

A 経営方針や、配当の分配率などは社員の総意で決めます。

  出資比率ではありません。

企業同士や、企業と大学研究者の共同研究、ベンチャー起業に向くと思われます。

似たようなものとして、有限責任事業体 LLPがあります。

これは、新法とは直接のかかわりはありませんが簡単に触れます。

平成 17年5月6日 「有限責任事業組合契約に関する法律」)公布されました。

@事業体の債務については、出資者が、出資の限度を超えて責任をおわない。

A取締役会、監査役の設置が不要
  組織内部の取決めが原則自由、損益の配分、分配について、

  出資比率に拘束されません。

B事業体レベルでの課税がなされず、出資者に直接課税されます。


日本版 LLPは、事業目的として、原則としてすべての営利事業を含みますが、

日本版 LLPは法人格を有しないので、許認可等で法人格が必要とされる事業には利用

できません。


株主代表訴訟

 新会社法では、株主代表訴訟については、会社利益にならない代表訴訟は却下され

ます。

また代表訴訟の関連では、会計監査人に対しても代表訴訟が導入されました。

会計監査人も被告となりうることで、期末の監査意見をめぐる会計監査人と、企業間の

緊張感が増大するものと思われます。

なお、新会社法においては、持ち株会社などになっている親会社の株主が、子会社や、孫会社の取締役の責任を株主代表訴訟で追及できるしくみにはなっていません。

この点については監視機能に対する課題が残されたとの見方もあります。

略式組織再編、簡易組織再編並びに対価の柔軟化

 新会社法のもとでは、合併、子会社の売買などの手間が簡素化されます。

議決権の 9割以上を保有する子会社の合併などは、略式組織再編として、子会社の

総会決議が不要となります。

他の会社を吸収合併する時の株主総会手続きを省略することができるのが、 簡易組織再編です。

合併の存続会社が相手の消滅会社の株主に与える株式が、発行済み株式の 20%以下ならば、存続会社での総会特別決議が不要になります。

現行では 5%以下までであったのが、20%以下までと、大幅に緩和されています。

また、柔軟化と言われているのは、合併する時に、相手の株主に与える対価は、存続会社の株式とされていましたが、これも別のもので代用できるようになりました。

ここで、現金を与える交付金合併が「キャッシュ アウト マージャー」

子会社が親会社の株式を取得して渡すのが「三角合併」として、可能になりました。

なお外資による「三角合併」も心配されたため、この「柔軟化」自体の解禁は、1年先送りされました。

なお現行法においても、親会社は対象会社を株式交換で完全子会社化し、もともと

あった子会社と、その対象会社を合併させることができる訳ですが、外国企業では

国境を跨いだ株式交換は不可能であるため、この方法によることができません。

このため新会社法による三角合併は、外国企業を念頭においたものと言わざる

を得ません。


参考文献

週刊エコノミスト 毎日新聞社  2005.1.4 武井 一浩

企業会計     中央経済者  2005 VO L.57 NO.8 中村直人、 森田耕司、石綿 学

朝日新聞  2005.6.29 朝刊

商法改正とその対応  行政書士 柏木 義治

会社法制の現代化に関する要綱試案  http://www.moj.go.jp/PUBLIC/MINJI39/refer01.pdf

会社法制の現代化に関する要綱試案 補足説明

http://www.moj.go.jp/PUBLIC/MINJI39/refer02.pdf